過去にスタグフレーションは起こったことがあるのか?歴史から学ぶ経済の落とし穴

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【1. はじめに:スタグフレーションとは何か】

近年、ニュースや経済番組で耳にすることが増えてきた「スタグフレーション(Stagflation)」という言葉。これは「スタグネーション(景気停滞)」と「インフレーション(物価上昇)」が同時に起こる異常な経済現象を意味します。

物価が上がっているのに、景気が良くならない。給料は増えず、失業者が増え、生活はどんどん苦しくなる…。そんな厳しい状況を指します。

本記事では、スタグフレーションという現象が過去に実際に起こったことがあるのか? どのような経緯で、どんな影響を社会にもたらしたのか? を歴史的な事例を交えながら、詳しく解説していきます。


スタグフレーションとは?物価が上がるのに景気が悪い時代のしくみと影響

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【2. スタグフレーションの定義を再確認しよう】

まず、簡単にスタグフレーションの特徴をおさらいしておきましょう。

● スタグフレーションの三大特徴:

  • 景気が停滞または後退している(GDP成長率が低下)
  • 失業率が高い水準にある
  • 同時に物価が持続的に上昇している(インフレ)

通常の経済では、物価が上昇すれば企業は儲かり、雇用も増え、景気は良くなります。しかし、スタグフレーションではその逆の現象が起き、政策対応も極めて難しいのが特徴です。


【3. 歴史上最も有名なスタグフレーション:1970年代のオイルショック】

● 第一次オイルショック(1973年)

1973年10月、中東戦争(第四次中東戦争)の勃発により、OAPEC(アラブ石油輸出国機構)が対イスラエル支援国への報復として、原油の供給制限と価格の引き上げを実施しました。

これにより、原油価格は短期間で約4倍に高騰。世界中で原材料費・エネルギーコストが急上昇し、企業の生産コストが増加。各国で物価が上昇する一方で、企業活動は縮小し、失業者が増加するというスタグフレーションが発生しました。

● 第二次オイルショック(1979年)

1979年のイラン革命によって、再び原油供給が不安定化。原油価格はさらに上昇し、前回以上に深刻なスタグフレーションが各国を襲いました。

● 主な影響:

  • 米国:1970年代後半、消費者物価指数(CPI)は年率10%を超える水準に。失業率も8%を超え、苦しい経済状況に。
  • 日本:物価上昇率は20%以上に達し、トイレットペーパーの買い占めなどパニック的な現象も発生。
  • 欧州諸国:軒並みスタグフレーションに陥り、失業率の上昇や景気の低迷が長期化。

【4. 2000年代以降のスタグフレーション懸念】

1970年代ほどの明確なスタグフレーションは起きていないものの、いくつかの「スタグフレーション的状況」が観測された時期があります。

● 2008年リーマン・ショック直前

原油価格の高騰により、物価は上がっていたが、アメリカのサブプライムローン問題などで景気は減速。景気後退と物価上昇の兆候が見られました。

● 2021年~ コロナ後の世界経済

コロナ禍で混乱した供給網、原材料不足、ロシア・ウクライナ戦争によるエネルギー・食料価格の急騰により、2022年以降、インフレ率は世界的に急上昇。

一方、景気回復は思うように進まず、「スタグフレーション予備軍」として各国で不安視されました。

  • 米国:インフレ率が40年ぶりの高水準(2022年には9%以上)
  • 日本:円安とエネルギー価格高騰により、スタグフレーション的圧力が強まる

【5. 日本におけるスタグフレーションの影響】

● オイルショック期(1970年代)

日本も第一次・第二次オイルショックの際、深刻なスタグフレーションを経験しました。

  • 消費者物価指数は前年比20%を超える上昇
  • 中小企業の倒産が相次ぎ、雇用不安が拡大
  • 金融引き締めにより景気は大幅に減速

ただし、日本政府の迅速な政策転換や省エネ技術の導入が功を奏し、比較的短期間で経済の安定を取り戻しました。

● 平成・令和期の“隠れスタグフレーション”

1990年代以降、日本では「物価が上がらないデフレ」が長年続きましたが、近年ではエネルギー価格の高騰や円安により物価は上昇。

しかし、賃金上昇が追いつかず、個人消費の冷え込みが懸念されており、「ゆるやかなスタグフレーション」との見方もあります。


【6. スタグフレーションが起きるとどうなるのか?】

● 社会的・経済的影響

  • 実質所得の減少 → 家計の生活苦
  • 消費の縮小 → 企業業績の悪化
  • 雇用環境の悪化 → 雇用の不安定化
  • 金融政策の難航 → 利下げも利上げも使えない

さらに、経済格差や社会不安、政治不信が広がることで、社会全体が不安定になりやすい傾向があります。


【7. スタグフレーションを乗り越えた国々の教訓】

1970年代の経験から、いくつかの国は以下のような政策でスタグフレーションを克服しました。

  • アメリカ(1980年代):FRBの強硬なインフレ抑制政策(高金利)によりインフレを沈静化
  • 日本:省エネ技術への投資・産業構造の転換(重厚長大→軽薄短小)
  • ドイツ:高付加価値産業へのシフト・労使協調による物価抑制

スタグフレーション克服には、「インフレを抑える」だけでなく、「産業構造の柔軟な転換」「労働市場改革」など複合的な対策が必要です。


【8. 現代のスタグフレーション懸念と私たちの備え】

2020年代に入り、エネルギー問題、地政学リスク、気候変動、パンデミックなど、スタグフレーションを引き起こす要因が複数あります。

私たち個人としては、次のような備えが考えられます。

  • 生活防衛(家計見直し、備蓄、エネルギー節約)
  • 複数の収入源の確保(副業、投資、スキルアップ)
  • 政治・経済への関心を持ち、自分で情報を選び取る力を養う

【9. まとめ:スタグフレーションは過去にもあった。そしてこれからも…】

スタグフレーションは決して新しい概念ではなく、1970年代の世界を大混乱に陥れた経験があります。そして、現代においても、同様のリスクは依然として存在しています。

歴史から学ぶことで、経済に対する正しい理解と、自分たちの暮らしを守る知識を身につけることができます。

スタグフレーションの本質を理解し、過去の教訓を活かして、柔軟かつ賢明な行動を取っていくことが、これからの時代における最大の防御策と言えるでしょう。

ほっこり
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